青森大学社会学部の櫛引素夫教授が研究代表を務める、「地域医療と新幹線」に関する科学研究費(科研費)助成事業の報告会が12月2日、青森市のあおもりスタートアップ・センターで開かれました。全国各地から対面・オンラインで約30人が参加し、新幹線がもたらした医療水準の向上や並行在来線の通院割引制度、医師の広域的な移動の実態と課題について理解を深めました。
櫛引教授は、北海道の道南と青森県、岩手県北部、長野県北部、新潟県南西部にまたがる研究活動の概要を説明し、▼新青森駅前の青森新都市病院が新幹線駅前の立地という条件を活用し、北海道新幹線を利用した医師の往来によって脳カテーテル手術の水準を向上させた▼岩手県の並行在来線・IGRいわて銀河鉄道が、岩手県北部から盛岡市内への住民の通院を支援する「IGR地域医療ライン・あんしん通院きっぷ」を展開-といった事例を報告しました。
大谷准教授は、道南の5医療機関へのヒアリングに基づき、▼大学医学部がなく弘前大や北大、札幌医大などの医師派遣に依存せざるを得ない状態にある▼新幹線や航空機で通勤する医師の勤務形態は、週1回程度・1~3日が多く、常勤の医師の勤務を補完する意味合いが強い▼この態勢によって安定的な医療サービスの提供が可能になっており、2024年問題への対応でも重要ーなどと指摘した上で「新幹線の効果は『何人運んだか』という視点で評価されがちで、このように『週1回・1人が移動する』といったケースでは効果の対象とみなされにくい。しかし、新幹線や航空機による通勤が可能なことで、地域における医療サービスの水準が確保されることは、『数』だけでは測り得ない効果として評価されてよいのでは」と強調しました。