青森県内の研究者で組織する「あおもり新幹線研究連絡会」(事務局=青森大学社会学部・櫛引素夫研究室)は1月31日、フォーラム「新幹線の現在地とこれからを考える-北海道・北陸・西九州・基本計画路線」を青森市のあおもりスタートアップセンターで開催した。北海道や東京からの来場者を含む約20人が対面で参加したほか、福井、富山、鹿児島、長崎、秋田、さらにカナダなどからオンラインで約30人が参加し、新幹線ネットワークの現状と建設への課題などについて意見交換しました。
フォーラムは今回が12年目・13回目(複数開催年あり)で、あおもり新幹線研究連絡会と櫛引研究室が主催し、青森大学付属総合研究所と青森大学社会連携センターが共催しました。
同連絡会メンバーの竹内紀人・青森中央学院大学教授のあいさつ、青森大学の澁谷泰秀学長、沼田郷・付属総合研究所長のメッセージに続き、櫛引教授が整備新幹線や基本計画路線の2025年の概況を解説。全線開業に至っていない北海道・北陸・西九州の3路線が抱える課題を整理するとともに、基本計画路線の関係自治体で、着工を求める動きが広まっていると報告しました。
続いて櫛引教授は、福井県敦賀市の協力を得て3年連続で実施した市民アンケートの結果を報告し、ほとんど利用していない人が半数ほどいるにもかかわらず、敦賀市や福井県に及ぼした効果が高く評価されていること、これらの傾向が開業半年後の2024年以降、あまり変わらず続いていることなどを紹介しました。
福井県立大学の前田陽次郎教授は、明治・大正期に青森のリンゴが敦賀を経由してロシア・ウラジオストクへ輸出されていた歴史に触れながら、リンゴが果物では最大の輸出品であること、輸出増大へ新たな取り組みの余地があること、新幹線でつながった地域の連携によって新たな産業的・歴史的視点を生み出す可能性を指摘しました。
青森大学付属総合研究所の村上亜弥客員研究員(青森市)は、同じ「鉄道と港のまち」である敦賀市と青森市を、現地調査に基づいて対比させながら、市民団体「敦賀の歴史をこねる会」による歴史を学びながら粘土をこねる活動、独自の企画展も開催している福井県文書館の存在を紹介し、青森市・青森県として学ぶべきところが多いと述べました。さらに、「青森市においても新幹線は“歴史の一部”となりつつある」と強調し、新幹線の整備記録などを再検証して、「歴史資料」として次世代に継承することの意義を説きました。
同じく青森大学付属総合研究所・客員研究員の永澤大樹氏(函館市)は、3月に開業10周年を迎える北海道新幹線について、経済的な恩恵と課題を総括しました。利用者数がコロナ禍の影響を脱し、首都圏と道南の流動の3割を占めていること、ホテル客室数が開業前から35%増加していること、法人税の課税対象所得額も他の同規模都市と比較して堅調に推移していることなどを紹介しました。しかし、青森-函館間の流動は減少傾向にあり、価格設定に見直しの余地があると述べました。
クロストークでは、新幹線の沿線同士が直接つながる意味、「巨大な条件変更」としての新幹線に地域がどう向き合うか、などがテーマとなりました。さらに、新幹線がもたらす影響を単一の学問領域で捉えることは困難という視点から、分野を横断し、利害から距離を置いた全体像を描く「新幹線学」という視座が有効ではーといった提起がなされました。
フォーラムの様子は2月4日の北海道新聞に掲載されました。