観光庁と青森大学が連携して実施いている、「産学連携による観光産業中核人材育成・強化事業」の初回に続き第2回の講座が開催された。
この事業は、青森大学観光文化研究センターが昨年から取り組み、今年度が2年目で、全部で2泊3日の講座を3回と4コマ(1コマ4時間)の講座を予定している。今年度のテーマは「自然資源を生かした体験型観光商品の開発と観光地域づくり」で、実践から学びながら新たな体験型観光商品開発を担う人材の育成を目指して開講している。
初回(第1ターム)は、7月に八戸市種差海岸で環境省が提唱している「みちのく潮風トレイル」のほか、国内外の「ロングトレイル」「フットパス」など「歩く」というテーマで行われた。初回に続き第2回目(第2ターム)の講座は、9月4日〜6日に鰺ヶ沢町熊の湯温泉を会場に行った。受講生のほとんどは、熊の湯温泉に宿を共にし、3日間にわたり熱心に熱い学びの時間を過ごした。
第2タームのテーマは「自然環境を利用したスモールビジネス」で自然資源を生かした体験型の観光商品を展開するためのスモールビジネスの手法を学んだ。
初日の冒頭に、山梨県清里で1980年代から環境教育に取り組み自然体験を事業化に取り組み、現在は公益社団法人日本環境教育フォーラム代表理事の川嶋直氏が「自然を守りつつ、自然を魅せる手法」というテーマで自然と人をつなぐ様々な体験プログラムに手法を紹介していただいた。小さな取り組みや工夫の積み重ねがやがて大きな展開につながる事例を知ることができた。
次に、世界遺産である白神山地がある津軽エリアをフィールドに「つがる野自然学校」を運営している谷口哲郎氏から「白神山地の現状と自然資源を生かした事例紹介」というテーマで活動のフィールを取り巻く状況を伺った。
夕食の後、熊の湯温泉のご主人である元マタギの吉川隆氏からマタギにまつわる講話をいただき、マタギが自然と共にある精神的な考え方や、白神山地が世界遺産に指定された背景に起こった様々な出来事など、吉川氏らが取り組んできた様々な貴重な思いに触れることができた。
翌日の2日目は、前日から接近してきている台風21号の進路を気にしていたが、幸いにも深夜に通過し朝から日が差す好天となった。午前中に吉川隆氏をガイドに、熊の湯温泉の赤石川対岸の山へ案内された。登山道や整備されたトレイルはなく、マタギが歩いてきた森の道をたどった。1時間ほど山の傾斜を登りで大きなブナの木が数本ある森につきしばらく時間を過ごした。深い森の空気に触れ、受講生それぞれが深い緑の山と森を体感した。
午後は熊の湯温泉の前を流れる赤石川で渓流釣りの体験。前夜の台風の影響で濁流が流れていたが時間を追うごとに水量も下がり清流が戻った。ハヤとヤマメを10匹ほど釣り上げ、川原で火を起こし食した。終了時間になり焚き火の始末をどうするのかの質問に、吉川氏は、「火を消すときに決して水をかけない。マタギが考える自然観の中にある火の神と水の神を喧嘩させない、燃えている薪を散らし自然に火を消す。」というマタギの自然観を伝えていただいた。
その後宿に戻り、きのこをネタに多角的に事業を展開している高橋久祐氏(盛岡広域森林組合)から「自然素材を活用したビジネス展開の手法〜外山森林公園の事例〜」と題して、山菜やきのこという自然素材を生かして展開している事例を紹介していただいた。まさに社会関係資本を生かした展開に多くのヒントを得た講座となった。夕食後、佐々木氏(青森大学)から参加者の今後のアクションプランとなる「自然資源を活用したビジネスモデルの作成ワークショップの導入の講座で2日目を終了した。
最終日の3日目は、昨夜のワークショプから引き続き、事業企画をする上で抑えなければならない6W2H1Sを書き出し、受講生自身が今後企画する事業計画を練る時間となった。最後に今回の講座のまとめとして、飛鳥氏(青森大学総合経営学部)から「スモールビジネスの経営指標」と題して小規模観光事業経営にかかる財務のあり方と読み方を学んだ。
次回の第3タームは、4回の講座(各回4時間)を11月、12月の日曜日に予定している。近年急速に増加している外国人観光客を受けいれるための様々な課題を、県内の4つの事業団体に伺い受講生と共に討議する予定。