58 年賀状

 暮れも押し詰まってきました。新年の用意に忙しくなる時期です。先生も走るという師走。忙しいのになぜかお正月の用意は楽しいものです。新年になったら今までのことはすっぱり忘れて新しい気持ちで再出発、という伝統が日本社会にあるからでしょう。
 青森は雪の中ですが、関東地方では木の葉がほとんど落ちて自宅回りの道路は落ち葉で埋まっています。それぞれの土地柄の師走です。
 この歳になると「喪中のため新年のご挨拶を遠慮します」というハガキが多くなる。20年ほど前までは「父母の他界」が多かったのですが、最近はご本人が逝去されたというハガキが多くなってきました。年に一度だけの年賀状交換がお互いの消息を確かめる手段となっているため、急に奥様からハガキをいただき友人の逝去を知る。その都度、軽いショックを受けます。
亡くなった友人とはこれが別れとなり、その後の連絡は途絶えます。人生、はかないと言えば、はかないです。これまでたどってきた時間がアッという間であったことに気が付きます。なんとも言い難い気持ちをかみしめながら来年の年賀状に取り組みます。
 人生、この「苦味をかみしめる」という作業が自分を鍛えるのだと思います。1年1年この作業を積み重ね、人は、気が付いた時には亡くなっているのかもしれません。
 年が明け、新年になると不思議にまた力が湧いてきます。今度は生きている方々からの便りが届き、また新しい前向きな空気に浸れるからです。特に若い方々の家族写真は年ごとにお子さんが大きくなっている様子が感じられ、こちらも力をもらいます。学校に勤務していると、学生や卒業生などが年賀状をくれます。手に取ってゆっくり読むと、みんな、版画や手書きの絵、イラストなど様々に意匠を凝らした力作です。
 年賀状は、減る分があるけれど新しい方からの挨拶が増えるので相変わらずの数となります。私の場合は毎年250枚ぐらいです。お金がかかりますが、年に1回の挨拶と思えばそれほど気になりません。メールの年賀状は義理そのものであんまりうれしくありません。欧米ではクリスマスカードもメールになってきているのでしょうか。
 世は何でもITですが、人間のぬくもりが残る作業をなくしたくはありません。機械でできることは機械に任せますが、機械を使うのは人間であることを忘れてはいけません。人間が機械に振り回されるのは本末転倒です。
 学校でも事務的仕事はITに任せる部分が多くなると思いますが、何をどう機械にさせるのかを考えるのは事務局員です。ITでもできる仕事はITにさせた方が早いし正確です。24時間休みなく働きます。文句も言いません。とても使い勝手の良い部下です。
 ITが進んで自分の仕事がなくなる、と考えずに、ITをうまく使いこなして新たな仕事に挑戦すれば良いのです。学校を基地としてどんどん外に出ても良いでしょう。学生ベンチャーを支援したいし、地域に貢献する作業に打って出てもいい。学内改革に取り組んでもいい。学生も事務職員も先生もITを使いこなし、新たな仕事を創り出せばいい。そして学校全体が活気に満ち、楽しい雰囲気に包まれれば理想的です。
 ITが目指す社会とは前向きなものです。生成AIが大きな課題を背負っていることは事実です。人間が使い方をうまくコントロールしないと便利さを乗り越えて悪さをするかもしれない。おかしな人間が核兵器を簡単に作るようになったらたまりません。偽の声、偽の画像などが氾濫するようになれば、何が正しくて何が間違いか、判別できなくなる恐れがあります。
 だから、ITが便利になればなるほどリスクも高くなり、悪事に使用されるのを防ぐガードも進化させなければなりません。このあたりをうまくコントロールすることができないと、ITの進化は人間にとってマイナスになります。
 しかしそれでもITは進化し続けるでしょう。ITの進化に対応する人間の知恵の進化が大丈夫でしょうか。私はそのカギを握るのは教育だと思います。
 青森山田学園は中学から高校、大学とIT教育を続けていきたいと思います。青森山田でのIT 教育は年代を追って様々なプログラムを展開することになります。どのようなプログラムが適切なのか、また必要なのか、全く新しい取り組みをしなくてはなりません。教職員の皆様、具体的な教育メニューはどうしたらよいのか、どう教えるのがいいのかなどIT社会に向けての対応策をそれぞれの立場でまとめてほしい。23日から始まる比較的長い冬休みを利用してじっくり考えてください。
 教職員の皆様、学生の皆さん、OBの方々そして理事、評議員の皆様、学校関係のすべての方々、明るい良いお年をお迎えください。
下記の写真・文章は来年の年賀状です。一足早くお届けします。

 

あけまして おめでとうございます 

南米のパタゴニアです。天を突く岩峰群は強い意思を表す。

青森山田学園の理事長になって10年がたちました。いよいよ第2期に入ります。長い間の修復期を脱してこれからは発展期です。苦しい時に高校スポーツの活躍に何度も励まされました。新年の高校サッカーも応援してください。私はこの1月で80歳になります。スキーとゴルフで体を鍛え、何事も前向きに立ち向かっていこうと思います。今後の教育界はITの進展による激動の嵐に襲われるでしょう。それも向い風とし、飛び立つチャンスと捉えたい。皆様、今年もよろしく。

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