21 論語と算盤(そろばん)

 先日、YouTube(ユーチューブ)を見ていたら、この算盤を「さんばん」と読んでいた人がいました。私のような年寄りには、この間違いは理解できませんでした。子供のころから算盤は身近にあり、自分でも小学校5年生の時に2級に受かっていました。今でも暗算(あんざん)は、指で算盤をはじくしぐさをしながら計算をする癖が抜けません。
 しかし、若い人にとって算盤なんて見たこともないのかもしれない。「さんばん」と読むのも当然かもしれませんね。スマホがあれば何でもわかる時代ですから。改めて時代の流れを感じました。
 ということで、今回のブログは、今年のNHK大河ドラマの主人公・渋沢栄一の著書「論語と算盤」を取り上げます。渋沢栄一は江戸末期から明治、大正にわたって日本の経済界を背負っていた人です。近代日本を代表するビジネスマンです。彼の人となりは今後の大河ドラマを見ていただくとして、この「論語と算盤」は、経済倫理とでも言いましょうか、論語に代表される「人としての在り方」と算盤に代表される「経済活動」との両立を説いた本です。
 これはすなわち、お金を儲(もうけ)ることは人のためにならなくてはいけない、自分のためだけにお金を儲るのは意味がない、ということです。人のため世のために働けば結果的にお金はついてくる、とも言えるでしょう。これは実は、ヨーロッパやアメリカでも言われています。日本でも古くから、例えば江戸時代の石田梅岩(いしだ・ばいがん)という学者も「商業は大切だ。お金を儲けることも大切だ。ただし、自分のために儲けるのではなく天下のために儲けるのだ」と説いています。
 渋沢さんはこの本で、教育について「教育の方針もやや意義を取り違えてしまったところがある。むやみに詰め込む知識教育でよしとしているから、似たりよったりの人材ばかり生まれるようになったのだ」(守屋淳現代語訳)と嘆いています。残念ながら、今の偏差値教育も全く同じです。
 また、こうも言っています「溌剌(はつらつ)としたチャレンジ精神を養い、それを発揮するためには、本当の意味での自立した人とならなくてはならない」(同上)
 青森大学は自立した若者を育てることを教育の根本においています。その上で、例えば総合経営学部で経営を学ぶ場合、経営学を学ぶのはもちろん、何のためにビジネスを行うのか、時代の流れはどうなっているのかも考えなくてはいけません。地域のため、日本のため、世界の経済格差是正のため、といった明確な目的が必要です。また、地球温暖化などの世界的な課題やITの進展など、時代の流れをつかむことも大事です。
 今、世界は何を必要としているのか、そこを知ることがビジネスの基本です。そしてチャレンジ精神と自立した心。それが「論語と算盤」の指摘するところです。
 でもこれは、経営だけの話ではなく、何の仕事をするにしても共通することですね。渋沢さんもそう思っているのではないでしょうか。

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