34 オリックスの優勝

 プロ野球パ・リーグのオリックスが25年ぶりに優勝を果たしました。近鉄バッファローズ時代からのファンもいらっしゃると思いますが、おめでとうございます。
 この優勝を報じた読売新聞27日付け朝刊スポーツ欄に外野手の杉本祐太郎選手の手記が掲載されていました。非常に良い記事でしたので紹介します。タイトルは「30歳 やっと戦力になれた」でした。
 ということは30歳まで戦力、いやレギュラーにはなれなかったのです。記事を読むと、2016年の入団以来、ほとんど1軍で試合ができなかった。2軍暮らしが長く、毎年シーズンが終わると首になるのではないかとひやひやしていたというのです。
 昨年8月、2軍監督の中島聡(なかじま・さとし)さんが1軍の監督に就任すると同時に杉本選手も1軍に昇格し、試合に出るようになった。今年のシーズン初めには、これがラストチャンスだと心に決めていたと言います。
 そんな杉本選手が4番バッターとしてホームラン32本を打ち、オリックスを引っ張る活躍を見せたのです。彼にとっては夢のような結果です。
 中島監督は2軍時代から杉本選手の可能性を信じていたのでしょう。それにしても、監督の存在は大きいですね。一言で選手生命がよみがえってしまう。一言で自信を失ってしまう。これは先生にも当てはまるのではないかと思います。
 私もそのような経験があります。中学に入った時、勉強についていけなくて泣いてばかりいました。しかしある時、先生が私を呼び止め「勉強なんてできなくてもいい。ヤル気になった時に頑張ればいい」と言ってくれました。その一言でヤル気になったのです。不思議ですね。先生は別に「勉強しろ」と言ったわけでもないのに勉強する気になった。先生が自分を気にかけてくれていたということで前向きな気持ちになれたのかもしれません。
 逆に、先生が何気なく言った一言で傷ついてしまう場合もある。気を付けなければいけません。自分ではそんなに強く言ったつもりはないのだけれど、言われた方が非常に傷ついてしまうことがある。
 担任やゼミの先生の一言で人生が変わる場合もあるということを教員は肝に銘じるべきでしょう。有名なサッカーコーチが言った言葉があります。You touch the future !! コーチは選手たちの未来を握っている、と言う意味でしょう。指導者はすべからく選手、生徒を信じ、それぞれの個性を伸ばし、励ましなさい、ということですね。
 ところで杉本選手はこの手記中で怪我をした選手や病気のため今季限りで引退する選手を気遣っています。3分の1ほどのスペースを割いています。自分が苦労してきたから出てくる言葉でしょう。杉本選手はすでに野球を超えて、何にでも通用する普遍的な力、人間力を身に付けています。将来が楽しみな人ですね。
       読売新聞10月27日(水)付 朝刊スポーツ欄

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