青森大学社会学部の櫛引ゼミ(担当・櫛引素夫教授)は6月14日、今別町の北海道新幹線・奥津軽いまべつ駅(JR北海道)で、「コロナ禍に負けない新幹線駅とまちづくり」をテーマに、同駅にとって初めてのワークショップを開催しました。石沢透駅長ら4人の駅員とゼミ生1人、さらにはオンラインで総合経営学部・沼田郷教授のゼミが参加し、2031年春の北海道新幹線・札幌延伸も視野に入れて、駅を拠点とした地域づくりや関係者の連携方法を探りました。今別町の広報担当者やJR東日本盛岡支社の担当者もオブザーバーとして参観しました。当日の様子は6月16日の東奥日報朝刊で報じられました。
ワークショップは、青森大学・櫛引研究室とJR東日本盛岡支社と外ヶ浜町、今別町が2020年度から進めている「JR津軽線プロジェクト」をきっかけに実現しました。2021年3月に「津軽線カード」(ガニ線カード)を制作・配布した青森大学生らが、「次は奥津軽いまべつ駅を舞台にした活動を展開したい」とこの5月に提案。具体的にどのような取り組みが可能か、奥津軽いまべつ駅の皆さんと試験的にワークショップを開き、検討することになりました。
会場となった同駅の改札内コンコースは、これまでもジャズ・コンサートや人形劇など、多彩な催しに使われてきましたが、大学との連携による、地域づくり検討の舞台となったのは初めてです。ソーシャル・ディスタンシングに配慮してアクリル板を設置し、プロジェクターやホワイトボード、ビデオ会議システム・Zoomを使用してワークショップを実施しました。
石沢駅長らは、全国107個所の新幹線駅で、最も利用者が少ないことから、奥津軽いまべつ駅が「秘境駅」と呼ばれていること、熱心なファンが北海道、九州など全国から来訪してYouTubeに多くの映像がアップされていること、地元や近隣の町村に呼び掛けて「保育園児の一日駅長体験」を積極的に実施してきたことなど、興味深い話題を次々に提供しました。また、駅前を、一般の人を対象にした記念植樹スペースにして、木の成長を確認しに町を定期的に訪れてもらう仕組みをつくれないか、などと提案しました。
進行役を務めた社会学部3年の相坂匠飛(たくと)君は、駅構内に展示されていた、北海道開業5周年を祝う子どもたちの壁新聞や絵に感銘を受けた体験を語り、「大学生と子どもたちとで、地域の未来を考える企画を繰り広げ、新幹線を利用してもしなくても、人が集まってきて楽しめる駅にできないか」と提起しました。また、オンラインで参加した総合経営学部の学生からは、「青森大学新体操部の演技も披露できるのでは」といった声が上がりました。さらに、奥津軽いまべつ駅の情報発信に、櫛引ゼミとして協力する案も出されました。
このほか、櫛引教授が非常勤で授業を担当する弘前大学の学生からも、「北海道新幹線と共に私たち自身も『旅』をしています。その『旅』がより良いものになるよう、少しでも力になれたらな、と思っております」といったメッセージが寄せられました。
今回のワークショップを通じて、参加者やオブザーバーから、駅を中心とした議論の場づくりが、非常に有効だという感想が聞かれました。また、青森大学にとっても、地域の枠組みに応じて、オンライン・オフラインの環境を駆使し、少ない負荷で柔軟かつ機動的に、さまざまな授業や課外活動を展開できる可能性を確認できました。
今後、「みんなの奥津軽いまべつ駅プロジェクト」(仮称)と銘打って、同駅と櫛引ゼミや青森大学が継続的に協力していく仕組みづくり、地元の今別町や周辺町村、さらには道南の市町村との連携策、北海道新幹線沿線と東北新幹線沿線をつなぐ企画などを、幅広く検討していく方針です。