53 小さな花の命

連休に入り、庭の手入れを始めました。玄関わきに張った芝生にどんどん芽を出す雑草を抜き取るのが、ひと苦労です。雑草は芝刈り機で刈り取れば、根が残っても芝が張り詰め、雑草が生えにくくなるのですが、1か月もすれば、どこからやってくるのかまた雑草が出てきます。棟方志功さんは東京の自宅で毎朝、芝生の上で体操をしたというのですが、その芝生は奥様が丁寧に雑草を抜き、はだしでも気持ちが良いようにしていたと言われています。
私もきれいな芝生を夢に描き、せっせと雑草取りをしています。雑草にもいろいろあって、根が強く張っている草、また引っ張るとすぐに抜ける草があります。すぐ抜ける草はどんどん抜けるのですが、背の低い根が張った草は、ちょっとした器具を使い、根を浮かせます。次から次へと根を浮かせ、引き抜くのですが、一坪(3.3m2)きれいにするのに1時間はかかります。今日(3日)までに十坪ぐらいきれいにしました。あと少しです。
この雑草取りをしているといろいろなことを考えます。きれいな可憐な花が咲いている。でも雑草だから抜く。ちょっと心が痛みます。普段は小さすぎて見えないような花ですが、よく見るときれいだし、かわいい。直径2㎜ぐらいの花もあり、5㎜から8㎜ぐらいが多く、大きくても1.5㎝ぐらいです。透き通ったブルー、真っ白、淡いピンク、黄色など、様々な花が咲いています。こんなにきれいなのに、雑草だからという理由だけで殺してしまっていいものか、などと考えてしまいます。きれいな芝生にしてみたいという軽い気持ちで雑草を抜いているのですが、なんともさわやかな感じで精いっぱい咲いている花を抜いてしまう。悪いことをしているのか、なんて考えてしまいます。せめて2,3日鑑賞しようと、コップに入れてみましたが、偽善のような気がしてしまいます。
草を抜きながら、ひと昔前、植物学者の本田正次(ほんだ・まさじ)博士から聞いた話を思いだしました。新聞記者時代「皇居の森とどうぶつたち」というタイトルで連載をした時のことです。様々な方にインタビューしましたが、本田先生には一番お世話になりました。本田先生は昭和天皇の植物の指南役(先生)でした。ある日、皇居の森を歩いていたところ、天皇陛下が「本田、これは何の花だ」とお聞きになった。本田先生は、ほかに考え事をしていたので「ああ、ただの雑草ですよ」と答えたところ、陛下は「本田、雑草という名の花はない」と言われたそうです。その時、本田先生は顔から火が出るように恥ずかしかった、と話しておられました。陛下のお言葉には諸説あるようですが、これは本田先生自らお話になったことですので、間違いはないと思います。
雑草取りに疲れてくると、寝そべりながら抜くことになります。今日は良い天気でしたので本当に寝そうになりました。忙しさに翻弄(ほんろう=振り回されること)される中、五月晴れのこんな日があってもいいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな花をコップに入れてみました。

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