41 むつキャンパスに寄せて

 4月2日、青森大学むつキャンパスが開校しました。計画発表からわずか1年半というスピードでした。その理由は、宮下宗一郎・むつ市長をはじめ、むつ市民及び下北の各町村の皆様の強い熱意です。「むつ100年の悲願」と宮下市長はおっしゃった。商工会議所の幹部の方々は「4年後に、むつの街に100人の若者が歩き、働いていることを思うと、夢のようだ」と述懐されました。
 古くは斗南藩の歴史に彩られた、むつの地です。苦難の末、会津から移り住んだ「士魂」が今も息づいています。教育熱心な土地柄、東京をはじめ全国各地に学生を送り出していますが、残念ながら若者はそのまま行ったきりで帰ってこない。18歳人口の96%が帰ってこない。
 国のために働いたって故郷がさびれてしまっては元も子もないのではないか。口には出さないが、誰もが心の底ではそう思っている。むつ市をはじめ下北の町村、いや過疎に苦しむ日本中のどの市町村が抱える大きなジレンマです。
 そんな悪循環にくさびを打とうとするのが今回の、むつキャンパス設立です。むつ及び下北半島には多くの資産が眠っています。 特に観光面では非常に魅力ある場所が多い。例えば恐山の霊場。亡くなった方とお話しができるという素晴らしい設定です。今の時代、実際に信じる人はいないでしょうが、観光の催しと考えると、これは楽しい。おみくじのような感じで接すればいいのではないでしょうか。ポケトークなどを利用して外国の方々も参加できるようにしたらいい。楽しい土産話になるでしょう。
 北限のサルや寒立馬も珍しい。外国人には人気となるでしょう。観光客を日本だけに限定しないで世界に広げれば良い。日本では「青森からむつ市までの2時間の移動距離が長い」という人がいるけれど、アメリカでは2時間ぐらいのドライブは日常茶飯事です。外国の方々はそんなに遠いとは思わないでしょう。
 函館や縄文遺跡群、白神山地、東北各地などと組み合わせてみるのよいでしょう。ヨーロッパ、アメリカ、アジア各国からのお客様を視野に入れれば提供できるものはたくさんあります。
 観光以外でも農業、漁業、地場産業などの活性化のために若者が残ることは重要です。インターネット時代にふさわしい新しいビジネスを興すのです。地元の若者が地元に誇りと自信を持つ。「世界の中の故郷」をしっかりと把握し、東京やニューヨークなどの大都会とはまた別な存在感を感じるようになれば、きっと町は明るくなるでしょう。
 地方行政にも挑戦していただきたい。市町村役場をはじめ公的機関に就職し、ふるさとのために働く、そして25歳以上になれば地方議会の議員なっていく。若者が社会の第一線で活躍するようになれば過疎はきっと脱却できます。
 むつツキャンパスはそうしたむつ・下北を創出するための大いなる実験場なのです。むつ市が渾身の力を込めて作ってくれた新しいキャンパスがそう語っています。

看板の除幕式 宮下市長(中央左)、私(中央右)、一人おいて藤原誠・前文科事務次官

校舎中央廊下、右側に教室が並ぶ

電子機器が完備した教室

コミュニティラウンジ

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