33 将棋の天才・羽生善治さんの本

 羽生善治さんの「捨てる力」という本を読み直してみました。2013年、PHP文庫からの出版です。青森山田の教育に携わるようになって、幼児から大学生までの若者と接する機会が増え、何かにつけて、この羽生さんの本が参考になることに気が付くようになったんです。そこで、羽生さんの本の中の要点を今回、ブログで紹介することにしました。
 まず、羽生さんの本の中から私が感銘を受けたフレーズを抜き出します。次にそのフレーズの幾つかについて羽生さんの説明を紹介し、あわせて私の感想を述べてみます。
【感銘を受けた言葉】 
① 守ろう、守ろうとすると後ろ向きになる。
② 積極的にリスクを負うことは、未来のリスクを最小限にする。
③ 感性を研ぎすます秘訣は、ほかのジャンルの人と積極的に話し、聞くこと。
④ 不安になり、プレッシャーを感じるということは、目標に近づいてきた裏返し。
⑤ 簡単な達成感でも積み重ねることによって自信がついてくる。
⑥ 好きなことなら時間がたつのを忘れてやり続けることができる。
⑦ どれだけたのしいかが、集中力の持続へとつながります。
⑧ 反省は勝負がついた後でよい。
 いずれも私の心情に触れる言葉です。本を読んで感動することの一つに、自分と同じ考えをさらに補強してくれる言葉に出会うことがあります。羽生さんの本を読んで私と違う箇所に反応する方もいると思いますが、ここで取り上げた言葉は私が反応した言葉なのです。ということは、私の意見を述べるのに羽生さんの言葉を借りて代用しているということですね。そんなことも考えて、読んでください。
 最初の言葉について羽生さんは「守りたければ攻めなければいけない。私は、自分の将棋は常にそうありたいと思っている」と書いています。そして2番目のフレーズについては「本当のリスクとは、決断を下したあとに伴うリスクではなく、決断を下すべき時に束の間のリスクを恐れ、逃げてしまうこと。怖いと思っても、恐れず前に進んでいく気持ちは次の勝利への大切な姿勢だと思います」と書いている。
 この二つの言葉は私の考え方と同じです。失敗を恐れて何もしないという姿勢が諸悪の根源です。今の日本の政治、役所などで弊害が発生しています。教育の世界でも同じことが起こっているかもしれません。若者の意欲を引き出し、勉強や芸術、スポーツに打ち込む姿勢を教えることが大事です。はじめから、「無理だよ」とか「危ないからやめな」とばかり教えていたら、きっと挑戦ができない大人になってしまうでしょう。
 4番目の文章について、羽生さんはこう説明しています。「たとえば、150㎝の高跳びのバーを前にした時、常に、200㎝跳べる人にはプレッシャーはありませんが、逆にいつも100㎝しか跳べない人もどうせできるわけがないとプレッシャーを感じないでしょう。大切なことは不安やプレッシャーを気にせず、日標に向かって挑戦し続けることです」
 プレッシャーを受けるということは前向きに生きているということの証ですね。そこに気が付けば、プレッシャーを楽しむこともできるようになるでしょう。
 5番目について羽生さんは「将棋道場へ通い始めた小学二年生のころを振り返って。通常は8級からスタートするが、道場の席主は15級をつけ、昇級する楽しみを与えてくれました。そうした経験から、達成しやすい簡単な目標から挑戦し、やる気を出すことが大事だと思う」と述べています。教育の本質を突いた言葉だと思います。学ぶ方と教える方の接触のタイミングが難しいのだと思いますが、阿吽(あうん)の呼吸が必要なのでしょうね。
 羽生さんに青森山田学園でお話をしてもらいたいなあ。
 

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