31 文武両道

 文武両道と言うと、とても古い言葉のように感じる人も多いと思いますが、最近、読売新聞(2021年8月27日付け朝刊)に掲載された「文武両道 エリート養成」という記事によると、アメリカではこの文武両道が現在も通用していることがわかりました。
 記事によると、東京五輪の3人制バスケの代表選手・富永啓生選手(20)はネブラスカ大学のバスケット部に入部する。富永選手は高校を卒業後、まず短大に入り、英語を勉強し、優秀な成績を修めネブラスカ大学に進学できた。将来はNBA入りを狙う。また、ジョージワシントン大学で女子サッカーをしている町環選手(22)はビジネス専攻だが、普段は朝8時から2時間ほど練習をして、講義を受け、夕食後は午後7時から夜中まで勉強しているという。その他多くの若者がアメリカの大学で文武両道にいそしんでいる。
 新聞記事を読めばもっと詳しく分かると思いますが、プロスポーツのエリートになろうとする学生は勉強にもかなり頑張らないといけない、ということなんですね。
 私は子供のころ、外国のオリンピック選手が、金メダルを獲得した時のインタビューで「競技をやめたら学校に戻って弁護士になる」とか「医者になるんだ」と言っているのを聞いた時に、よく理解できませんでした。オリンピック選手になるためには勉強なんかしないで人生、いや青春のすべてをかけて練習に励んでいるのだ、と思っていたからです。
 最近ではラグビーの福岡堅樹選手がプロ選手をやめて順天堂大学医学部に入学したことが話題になりましたが、日本でもようやくトップ選手で文武両道を実践する人が出てきたようです。これまでにも日本のスポーツ選手が競技をやめた後に全く違う人生に挑んでいった事例はありますが、例外的な行為でした。
 なぜかと言うと、学生時代に勉強をしなかった人が多かったからでしょう。スポーツだけやって、そこからチームワークや頑張りや努力、成功体験などを学び、それが実人生に大いに役に立つから就職もでき、何もしないでダラダラと学生生活を送った人より成功できるから、それで許されたのでしょう。
 でも、学生スポーツに限定すれば、やはり文武両道が王道ではないでしょうか。ヨーロッパのジェントルマン教育や日本の武士教育は同じように運動(スポーツ、武術)と学問の両方を修めてリーダーとなる、というところでは同じです。
 大学で勉強できるという状況や高校でスポーツに打ち込めるといった境遇は大変恵まれているわけです。それだけに卒業後、社会に対する貢献が求められるのは当然のことです。学生だけでなく教員、監督、コーチそして親も、みんながその精神を共有すべきです。
 スポーツに打ち込む若者がそうした自覚を持てば、世の中は大きく変わるでしょう。立派なリーダーが次々に出てくるでしょう。
 青森山田学園はスポーツに力を入れています。その中で文武両道が躍動しているクラブも多くあります。この素晴らしい伝統を引き継いで、今後も、この文武両道の精神を堅持し、頼もしい若者を育てていきたいと思います。

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