29 ねぶたねぶた

 今年もねぶたがない。2018年の写真が出てきたのでしみじみ眺めた。さみしい限りですね。でも今月末に短いながら、ねぶたの出陣ができるという。霧の向こうに日差しが見えたような気がします。
 夏といえば、私の場合は長野の山と決まっていました。昨年も北アルプスの五龍岳に登ってきました。しかし、青森山田の理事長になってからは、いつの間にか、夏にはねぶたがなくてはならないようになりました。
 なんというか、あの懐かしいような心の底から揺さぶられるような笛と太鼓の響きに包まれるといつの間にか気分が高揚してきてしまいます。ねぶたの囃子のリズムには日本人の心に通う何かがあるのでしょう。私のようなよそ者でさえ、ねぶたのとりこになってしまうのですから。
 友人の造園学者・進士五十八さんが毎年、大学の新入生に「自分の原風景」を描かせていましたが、不思議なことに多くの学生が「山があって川が流れていて田んぼがある」景色を描くそうです。昔話の桃太郎に出てくる風景ですね。都会育ちの学生でもそんな景色を描くのです。彼は「おそらく日本人が持つ原風景なんだろう。だから原風景という題の答えはこの景色になるのだと思う」と解説してくれたことがありました。
 ねぶたの囃子のリズムは日本人の心のリズムなのかもしれません。でも、外国の方もこの囃子、リズムに浮かれてしまうと言いますから万国共通なのでしょうか。ならばオリンピックの時にねぶたが出陣すればよかった。長たらしいお説教のような挨拶やら訳のわからないコントなどより数段良かったのに、と思います。
 ねぶたに200万人を超える観客が全国から集まるのも不思議ではありません。ねぶたと囃子、そして跳人とくれば誰もがウキウキします。おそらくリオデジャネイロのカーニバルも同じようなものなのでしょう。
 世界に誇るねぶたです。自信をもって世界から観光客を呼び寄せたい。世界遺産が二つもある。八甲田の高原もあるし、アウトドアもたっぷり楽しめる。だれもが喜びます。来年からのねぶたは世界に開かれたねぶたにならないかな。

タイトルとURLをコピーしました