16 〝蝶々の羽ばたき〟から世界を読み解く

 最近ある雑誌の1ページに目が留まりました。「図書」12月号の巻頭言(写真)です。千葉大学の酒井啓子先生の文章です。オンラインでの会議が進み、世界の景色が大きく変化してきたというのです。その文章の中に次のような一説がありました。
 「イラクの片田舎の活動家とニューヨークの新進気鋭の社会学者と東京の一介の学生がオンラインでおしゃべりするのが当たり前になったコロナ禍の今では、途上国の片隅から世界が動くことも、十分当たり前にありうる話だ」
 この指摘に、私も同感です。世界は大きく動き始めている。それがよいのか悪いのかはまだ判断できないが、動き始めているのは確かです。「コロナ以降」という問いが多く発せられていますが、いずれもこうした大きな潮流を感じ取ってのことでしょう。
 2020年という年は、コロナ禍とともに歴史に残る年になると思われますが、もしかしたら、コロナ禍以上にデジタル化が大きく進むきっかけとなった年として記録されるかもしれません。目の前の危機であるコロナに気を奪われている間にデジタル化はスピードを増している。気が付けば、5Gもすぐそこまで来ていますし、2,3年のうちに世の中は大きく変わってしまうのではないでしょうか。
 これまではマスコミという伝達手段が世界を動かしてきました。マス(大勢の人)にコミュニケーション(伝達する)方法は一方通行でした。放送局や新聞社というところから一方的に一般の人々に伝えられるものでした。時にはこの手段が権力者に悪用されたこともありました。
 しかし、今のデジタル化はそうではありません。誰もが世界に発信できるのです。誰もが世界中と交信できるのです。言葉という課題が残りますが、それも自動翻訳という形で時間が解決していくでしょう。フェイクニュースが世界を駆け巡るかもしれない。だが、同時に世界で様々な知的スパーク(ひらめき)が始まるかもしれない。
 2020年の終わりにあたって、次なる時代のありようについて考えてみたらどうでしょうか。社会の未来は、そして教育のありようは、どう変化していくのか。分からないなりに想像してみたらどうでしょうか。そして楽しい初夢を見たいものですね。
 皆さま良いお年をお迎えください。

タイトルとURLをコピーしました