15 噂(うわさ)と津軽の足引っ張り

 先日ゴルフ場で足首を骨折しましたが、入院後数日で、私の骨折事故が大きく変化して伝わっていました。「理事長が大腿部(だいたいぶ)骨折らしい」。それから数日して「理事長は両足骨折だ」となって皆様に伝わったようです。
 「理事長が足を折った」という話が人から人に伝わる間、「大けがをしたらしい。足だそうだ」から次第に「大腿部骨折」になったのでしょう。また、「両足骨折」は、私が病院で車いすを使って売店に行った時、左足に包帯を巻き、右足に白い靴下を履いていたのですが、それを見たどなたかが、両足に包帯を巻いていたように思って「理事長は両足骨折したらしいよ」と誰かに話したのでしょう。
 話が伝わる間にどんどん変化していくことは良くあることですが、いざ自分のこととなるといささか複雑な気持ちになりました。
 噂というものはとかく、事実から離れて流布(るふ)されていきます。「らしいよ」から徐々に事実のように伝えられるようになるのでしょう。それが事実でなくても「さもありなん」という状況では、いつの間にか事実にすり変わっていくのです。
 ところで、青森には「津軽の足引っ張り」という言葉があります。これも、「らしいよ」が事実にすり替わり、人の足を引っ張る結果になる、ということが一因なのではないでしょうか。雪深い場所柄、噂を確かめることが難しいまま人から人に伝わっていき、事実化してしまい、その結果、「足を引っ張る」ことに繋がってしまう、ということもあるのではないでしょうか。
 もっとも、初めから足を引っ張る目的で噂を流すこともあるでしょうし、とかく人のすることにケチをつけたがることもあるでしょう。津軽には人の成功をやっかむ人が多い?とも言われていますが、そんないくつかの「足引っ張り」現象の一つに、うわさを確かめずに、面白いからどんどん話を膨らましてしまう、といったこともあるのではないかと思うのです。
 しかしながら、これは「雪深い津軽」といったこととは関係なく、現代でもSNSなどでのいわゆるフェイクニュースなどにも現れています。どんな時代でもどんなところでも、こうした誤った話が伝わり勝ちです。噂が変化したり、わざと嘘(うそ)を流したり、津軽だけではなく、どこにもあります。津軽の人が「津軽にだけ多い」と感じているだけかもしれません。
 私たちにできることは、「自分で噂話を確かめること」そして「いい加減な思い込みを人に言わないこと」などでしょう。いずれも自分自身がしっかりすることしかありません。何やらコロナの伝染防止にも似ているようですね。

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