13 ローマ法王に米を食べさせた男

 最近、アマゾンのテレビ番組で「ナポレオンの村」という連続テレビドラマを見ました。唐沢寿明の主演で楽しい村おこし物語でした。その原作がある、というので調べて本を買いました。題して「ローマ法王に米を食べさせた男」講談社、2012、1400円(税別)。
 著者は高野誠鮮(じょうせん)という方で、福井県羽咋(はくい)市役所の職員でしたが、型破りな方法で限界集落を蘇(よみがえ)らせたことで有名になり、スーパー公務員とも呼ばれました。現在は羽咋市の日蓮宗本證山妙法寺の住職(じゅうしょく)をされています。新潟経営大学の特別客員教授もされています。
 内容はとても面白い。今の市町村の役場がいかに働かないか、保守的で新しいことを拒絶する組織であるか、日本の過疎問題についての市町村の無能ぶりを暴(あば)いています。「人の役に立つことをするのが役人だ」という名せりふを叫びながら限界集落の活性化に邁進(まいしん)します。  
 2004年、「空き農地・空き農家情報バンク」を設置、2016年には12家族35人が移住してきています。限界集落のひとつ、神子原(みこはら)地区では美味しい米が獲れていたのですが、農協を通して安く買いたたかれるので、自分たちでブランド化することを決意し、ついにはローマ法王に神子原米を献上することに成功しました。それをマスコミが大々的に報道したため、一気にブランド化しました。サッチャー英首相、ゴルバチョフソ連首相、レーガン米大統領に直接手紙を書いたり、UFO国際会議を開いたりと縦横無尽(じゅうおうむじん)の大活躍です。役所のルールは無視し、市長との直接取引で突き進んでいく。
 役所の中では嫌われたでしょうね。でも地域の住民からはとても感謝されている。上司の顔色だけを窺(うかが)い、役に立つ人になろうとはしない役人がはびこる中で異色の活躍でした。
 しかし、振り返ってみると、現在の日本は、役人じゃなくてもこんな人があふれているような気がします。仕事について、お金や給与だけが報酬ではなく、仕事の成果も報酬なのだということを忘れがちです。ある仕事を懸命にこなし、その結果、人が喜んでくれる。生徒学生が喜んでくれる。これも大きな嬉しさであり報酬と考えていいのではないでしょうか。
 青森山田学園は地域の若者を預からせていただいています。地域の若者が元気になれば地域が元気になります。青森市周辺には過疎や限界集落で苦しんでいるところも多い。何とかしてさびれた集落を蘇らせたい。元気にしたい。若者たちに故郷の良さを理解してもらい、誇りを持ってもらいたい、と思います。
 私たちに何ができるか。具体的にはどんな教育が良いのだろうか。本を読んだ今、大きな宿題を課されたような気がしています。

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