11 コロナ後と5Gの世界③

 平成という時代は、日本経済にとって大変な停滞期でした。表を見ていただければ一目瞭然(いちもくりょうぜん)です。平成元年には世界の大企業の時価総額ランキングで上位50社のうち日本の企業は32社ありました。当時、日本はまさに世界経済を引っ張っていたのですね。ところが、平成30年にはどうなったでしょうか。上位50社の中にあるのはトヨタ1社のみ。それも35位です。大変な凋落(ちょうらく)ぶりです。
 その大きな原因はデジタル時代に後れを取ったことでしょう。今月スタートした菅内閣の最初に取り掛かる仕事がデジタル庁設置であるというのもわかります。ICT時代を国中で見誤り、今度のコロナ騒ぎでは役所の遅れが浮き彫りにされました。見舞金10万円を配るのに何か月もかかり、大学のデジタル授業について何の指導もできず、「デジタル授業は卒業単位の半分以下」と定めてあるのに、なし崩し的に1年間の授業すべてをデジタル化としても目をつむる、といった政府の混乱ぶりは目に余るものがありました。
 コロナを契機として国民の間でIT化についての認識が高まり、テレワークが進んだという良い点もありますが、日本は世界に比べ、ひどく遅れていたことも判明しました。
 5G社会になれば、今の通信速度の100倍になると言われ、2時間ドラマが数秒で送信できるのです。実際、世界各国ではこの5Gが実用化されつつあります。日本では2019年に実験が始まり、2020年度には実用化される、ということで準備が進められていましたが、政府にやる気があるのかないのか、いまだに動きません。
 コロナ禍で世界は変わる、とよく言われますが、私はそうではなく、コロナ禍で日本人がICT時代の到来(とうらい)に気が付いた、というのが正しいと思っています。
 情報通信技術の進展により、人類社会が大きく変わっていきます。革命的な変化が始まっているのです。テレワークもそうです。自動車の自動運転や遠隔医療、そして遠隔教育も黎明(れいめい)期を迎えています。
 ビジネスの世界では、企業はすでに走り出しています。日本の優秀なビジネスマンはきっと世界に追い付いてくれるでしょう。しかし教育の世界はどうか。まだ動いていません。デジタル授業の良いところ、悪いところを区別し、良いところを利用して役にたてようという動きはまだほとんどありません。新しいい時代の教育についての論議が遅れています。
 偏差値教育でいいのだろうか。正解を探し出す力、暗記する力だけを養っているだけでこれからの世界を生きていけるのだろうか。ICT時代に、人間がコンピューターに負けないようにするための、「独創性を養う」「自分から動く」「正解のない課題に挑戦する」といった教育を展開するにはどうしたらよいのか。
 青森山田はこうした時代の課題を的確につかんで、気概のある若者を育てていかなくてはなりません。その方法は生徒、学生も含めてみんなで考えていくべきです。議論を盛んにしていきましょう。

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