ティータイム2 「雪の働き」

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藤田 均(ふじた・ひとし)
1947年、東京生まれ。東京大学卒。
卒業後、28年間、環境庁で主に国立公園、
野生動植物の管理、自然観察会に携わる。
自然公園指導員、県自然環境保全審議会委員。

青森の人間にとって厄介なものは雪である。出勤前の雪かきは、時間がない身にはこたえる。冬の朝、雪が降るとまだ暗い六時前にそっと道路を見に行く。ああ今日も除雪車が道路に雪を置いていったかと、作業服に着替え、三十分から一時間せっせと排泄作業にいそしむ毎日。雪さえなければ青森市は実に住みやすい所なんだが・・・と愚痴ることに。さらに腰を痛めたときには・・・吉良上野介である。汗ぐっしょりになるのでシャワーを浴び・・・。慌しい一日の始まりである。

こんな時は雪の効能を考えてみたい。青森に来て得た楽しみの一つに山菜採りがある。特にギョウジャニンニクとタラノメ採りが気に入っている。山菜は雪との関係が深い。冬の寒い時期には土の中や枝先で、氷点下七、八度になる外気の中でずっと零度近くに保温してくれているのは雪。春先、早めに芽が出て寒の戻りの霜害に遭わないよう、暖かさが落ち着くまで芽出しを調節しているのも雪だ。仕事で北海道から沖縄まで全国各地で暮らしたが、体験から言って、青森は山菜が日本一豊富な所だ。その影の功労者が実は雪である。

また、関東で、四国で、沖縄では、雨が少ないとすぐ断水、水道が止まってしまう。これに対し青森は雪がどっさりあるので、ため池代わりになる。夏、日照りが続いても、冬半年間の雪という貯金があるため水は豊富にある。また、青森は日本一おいしい水が水道で飲めるという。それは雪による水道の冷たさも関係している。余談だが、青森ではおいしい水はブナのおかげだという人が多い。否定するものではないが、ブナがなくても屋久島の水はうまかった。晴れた日でも宮之浦岳の山頂付近でも川が流れていて・・・。あの水のうまさは、雪と川床の花こう岩のおかげだろう。

雪の効能はまだまだあるが、冬の街の、田畑の、山々の美しさを挙げなくてはいけないだろう。半年に及ぶ冬、青森は白に覆われて、実に美しい。日本の自然は世界でも一流だ。でも外国からの観光客が少ないのは、京都を除いて町並みが汚いからだといわれている。さまざまな色の屋根や壁で、タウンスケープの落ち着きがないのである。「冬の青森は色に整然性があってきれいだ」と、世界中に大いに宣伝してもらいたいものだ。

※このコラムは東奥日報に掲載されたものです。 同社よりHP上での使用許可を受けています。